「教習所では軍手でもいいって言われたから、公道でも軍手でいいよね?」 「夏は暑いから素手で乗ってる」
もしあなたがそう考えているなら、今すぐその考えを捨ててください。 厳しい言い方をしますが、公道をバイクで走る際に軍手や素手でいることは、「指がなくなっても構わない」と言っているのと同じです。
人間は転倒した際、反射的に必ず「手」を地面につきます。 時速40kmや60kmでアスファルトに手を突いたらどうなるか。軍手なんて一瞬で繊維が溶けて消え失せ、その下の皮膚、そして肉がヤスリがけされたように削ぎ落とされます。 一度失った指の機能や神経は、二度と元には戻りません。
この記事では、あなたの「手」を守るためにバイク用グローブが絶対に不可欠な理由と、快適に一年中走り続けるために揃えるべき「3種類のグローブ」について、3,000文字で徹底解説します。
第1章:なぜ「軍手」や「革手袋」じゃダメなのか?
ホームセンターの作業用手袋や、ファッション用の革手袋では、バイクの操作には不十分です。その理由は「防御力」と「操作性」にあります。
1. 摩擦熱で溶ける「軍手」の恐怖
一般的な軍手(化繊)は、摩擦熱に非常に弱いです。 転倒してアスファルトと擦れた瞬間、高熱で繊維が溶け出し、傷口(皮膚)に癒着します。こうなると、病院での治療は「溶けた繊維を肉から剥がす」という地獄の激痛を伴う処置になります。 綿100%なら溶けませんが、防御力は皆無(布一枚)なので、衝撃で骨折したり裂傷を負ったりするのは防げません。
2. 操作性が悪い
バイクのアクセルワーク、ブレーキ、クラッチ操作は非常に繊細です。 汎用の手袋は、グリップを握った形(立体裁断)に作られていないため、握り込むと手のひらに生地が余ってゴワゴワしたり、指先が突っ張ったりして、スムーズな操作を妨げます。 「とっさのブレーキが遅れる」ことは、事故に直結します。
3. バイク用グローブの特殊機能
バイク専用品には、以下のような機能が標準装備されています。
- ナックルガード: 拳の部分に硬いプロテクターが入っており、転倒時の衝撃や、跳ね石から骨を守る。
- パームスライダー: 手のひらの「手をつく部分」に硬い樹脂が付いており、転倒時に路面を滑らせることで、手首の骨折を防ぐ。
- 立体裁断: ハンドルを握った状態で縫製されているため、長時間握っていても疲れない。
第2章:これだけは揃えろ!季節別「3双」の選び方
バイク用グローブに「一年中これ一つでOK」という万能選手は存在しません。 日本の四季に合わせて、最低でも**3種類(夏用・冬用・雨用)**を使い分けるのが、快適で安全なバイクライフの鉄則です。
1. 【夏用】メッシュグローブ
夏場に革グローブをしていると、手汗で中が蒸れ、不快指数がMAXになります。汗で手が滑って操作ミスをする危険もあります。
- 特徴: 通気性の良いメッシュ素材で作られており、風が通り抜けて涼しい。
- 選び方: 涼しさ重視ですが、必ず「拳(ナックル)」と「手のひら」にプロテクターが入っているものを選びましょう。
- 寿命: 生地が薄いため、2〜3シーズンで買い替えになる消耗品と割り切りましょう。
2. 【冬用】ウインターグローブ
冬のバイクは「指先の凍結」との戦いです。指がかじかむと、ブレーキレバーを握れなくなります。これは本当に危険です。
- 特徴: 防風・保温素材(中綿やゴアテックスなど)が使われており、分厚い。手首(カフ)が長く、ジャケットの袖口からの隙間風を防げる。
- 選び方: 「温かさ」と「操作性」はトレードオフです。分厚すぎるとスイッチ操作がしにくくなります。最近は「電熱グローブ(バッテリーで発熱)」も人気で、一度使うと戻れない快適さです。
3. 【雨用】レイングローブ
「防水」と書かれた冬用グローブでも、長時間雨に打たれると浸水してきます。一度濡れたグローブは不快なだけでなく、気化熱で体温を奪い、乾燥させるのも大変です。
- 特徴: ネオプレン(ウェットスーツ素材)や完全防水素材で作られている。
- 使い方: ツーリング中の雨に備えて、常にバッグに忍ばせておく「予備グローブ」として持っておくのが正解です。軍手しか持っていない人は、まずはこれを買うだけでも生存率が上がります。
第3章:サイズ選びは「靴」よりもシビアに!
ネット通販でグローブを買う際、一番失敗するのがサイズです。 「普段LサイズだからLでいいや」は危険です。メーカーによってサイズ感は全く違います。
「指先」の余りに注意
指先が余りすぎていると、ウインカースイッチやホーンボタンを誤操作したり、レバー操作の邪魔になったりします。 逆に、指先がパツパツだと、ハンドルを握った時に爪が圧迫されて激痛が走ります。
正しいフィッティング
可能なら用品店で試着するのがベストですが、ネットで買う場合は**「手長(中指の先から手首まで)」と「手囲い(手のひらの外周)」**をメジャーで測り、各メーカーのサイズ表と照らし合わせてください。 迷ったら、夏用などの薄手はジャストサイズ、冬用は空気の層を作るためにワンサイズ大きめを選ぶのがセオリーです。
第4章:コスパ最強はどこ?おすすめメーカー
「有名ブランド品は1万円以上して高い……」 そんな人のために、安全性と価格のバランスが取れた「間違いのないメーカー」を紹介します。
1. KOMINE(コミネ)★コスパの神
「コミネマン」という愛称で親しまれる、日本の老舗メーカー。
- 特徴: とにかく安いのに、プロテクターがガチガチに入っている。安全マニア御用達。
- 価格: メッシュグローブなら3,000円〜、ウインターでも5,000円〜で買えます。Amazonで買うならまずここをチェック。
- おすすめ: 迷ったらコミネを買っておけば、防御力に関しては間違いありません。
2. RS TAICHI(RSタイチ)
デザインと機能性のバランスが良い、大阪のメーカー。
- 特徴: スタイリッシュで普段着にも合わせやすい。操作性が非常に良く、縫製もしっかりしている。
- 価格: コミネより少し高い(5,000円〜1万円前後)ですが、所有感があり長持ちします。
3. WORKMAN(ワークマン)
最近バイク用品に力を入れている作業着ブランド。
- 特徴: 圧倒的安さ(1,900円〜2,900円)。本革を使ったモデルもあり、コスパは異常。
- 注意点: プロテクターが入っていないモデルや、簡易的なものもあるため、「バイク専用(ライディング用)」として売られているものを選びましょう。
第5章:メンテナンスと寿命
グローブは消耗品ですが、手入れ次第で寿命は変わります。
汗を含んだまま放置しない
夏場のグローブは汗を大量に吸っています。放置すると雑菌が繁殖して強烈な悪臭を放ちます。 メッシュグローブは中性洗剤で手洗いし、陰干ししましょう。
革グローブにはオイルを
本革のグローブは、雨に濡れたり乾燥したりすると硬化してひび割れます。 シーズン終わりには、ミンクオイルや保革クリームを塗って保湿してあげると、しなやかさを保ち、何年も使えます。
買い替えサイン
- 指先に穴が開いた。
- マジックテープ(ベルクロ)がくっつかなくなった。
- 手のひらの滑り止めが剥がれた。
これらは寿命です。安全のために新しいものに買い替えましょう。
まとめ:グローブは「第二の皮膚」
「ヘルメットは義務だから被るけど、グローブは任意だから……」 法律上はそうかもしれません。しかし、物理法則は待ってくれません。転倒すれば、皮膚は物理的に削れます。
バイク用グローブは、わずか数千円で買える「第二の皮膚」です。 この数千円をケチった代償が、一生残る傷跡や、指の欠損になってからでは遅すぎます。
まずは、お気に入りの一双を見つけてください。 しっかりしたグローブを嵌めてハンドルを握ると、「よし、走るぞ」というスイッチが入り、バイクとの一体感が増すはずです。 安全でカッコいいライダーは、指先までこだわっています。
